〜熊本市交・9700形〜
9700形は、日本で初めて登場した超低床電車で、1997年8月2日から営業運転を開始しました。
熊本市交でのLRTを目指した超低床車の導入については、1990年にすでに方向づけられていた
ようだったのですが、この超低床車の開発は国内メーカで行なうには採算ベースに乗らないなど
の理由から、なかなか進まずにいたようです。 その後、ドイツのADトランツ社製の車両を日本向けに設計変更したうえで、新潟鉄工所が製造する ということになり、この9700形が登場しました。 足回りなどの電機品については、ドイツのABB・ダイムラー・ベンツトランスポーテーションが担当し、 国内では同じくドイツのシーメンス社についで、2番目の海外製制御機器が入ってくることになり ました。VVVF制御装置はIGBT素子を使用したもので、2レベルインバーターであり、1C1M制御となって います。電動機は1車体1台車1モーターとなっていて、自在継手・スプライン軸組み込み3段減速という 方式で駆動しています。なお、この車両は欧米向けの車両よりも加速度・非常減速度・最高速度 が抑えられています。性能的には70km/hが出せますが、最高40km/hに抑えられています。 床面高さは路面から36cmで、乗降口付近は少し低くなっていて30cmしかなく、電停ではわずか 12cmの段差でしかありません。乗り降りは非常に楽で、びっくりさせられました。 室内は、タイヤハウス上にはクロスシートを、その他のスペースにはロングシートを配置してい ますが、スムーズな移動を考慮しているために、2車体で24名分しか座席がなく、しかも1名分は 車掌スペース(この車両には必ず車掌が乗務しています)となっていて実質的に23名しか座れない のが難点かもしれません。 しかし、この超低床車は日本の都市交通の未来が託されているといっても過言ではなく、 現在数多くの制約や課題点がありますが、一つ一つ乗り越えていってもらいたいと思います。 この9700形は1999年4月にリース方式の採用で2編成が増備され、さらに2001年3月に2編成が増備されたため 現在は5編成体制で運行しています。最新増備の9704AB・9705ABについては主制御装置などの一部電機品が 国産化され、VVVFインバータは三菱製になっています。 |
9700形の車内です。車掌が必ず乗務しています。車内の移動をスムーズにするため、座席数が
少なくなっています。 9701A車内にて。(1999/03/04) |
最新増備の9700形の車内は水戸岡鋭治氏によるデザインとなっており、黄色を多く用いた車内となっています。 9705A車内にて。(2001/09/01) |
9700形の運転席背面には1998年の鉄道友の会ローレル賞のプレートのほか、表彰プレートや
銘版(新潟鉄工所とADトランツ)がずらりと並んでいます。 9701A車内にて。(1999/03/04) |
9701AB〜9703ABの3本は海外製の電機品を使用しています。パンタグラフの隣、連結面寄りに見えるのがVVVFインバータの
箱です。奥のB車屋上中央に載っているのはSIV装置です。 9703AB、市立体育館前にて。(2001/09/01) |
9704AB・9705ABの2本は三菱製の電機品を使用しています。パンタグラフの連結面寄りに見えるのがVVVFインバータ
箱と思われるのですが、奥のB車屋上に載っている大きな箱、これはSIVですかね…? 9705AB、市立体育館前にて。(2001/09/01) |